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東京高等裁判所 昭和39年(く)66号 決定 1964年5月28日

少年 S(昭二三・四・一二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、抗告申立人は少年の伯父であり、その事実上の保護者であるが、原決定の第三および第四の各非行事実の認定には、重大な事実の誤認があり、且つ原決定の処分は著しく不当であるから、原決定の取消を求めるため、本件抗告におよんだ次第であるというのである。

少年法第三二条は保護処分の決定に対する抗告申立権者を少年その法定代理人または附添人と定めているが、一件記録によれば抗告申立人は、少年の伯父で、その保護者ではあるが、少年の法定代理人ではなく、またその附添人でもないことが明らかであるから、抗告申立人には、原決定に対する抗告申立権がないものといわざるをえない。従つて、抗告申立人がした本件抗告は抗告の手続がその規定に違反しているものというべきであるから、少年法第三三条第一項により、これを棄却することとして主文のように決定する。

なお、一件記録によれば、原決定の第三および第四の非行事実はすべて十分に認めることができ、記録を精査しても、原決定の右各事実の認定には重大な事実の誤認はなく、また少年は原決定が詳細に説明しているとおり、初犯ではあるが、連続的な空巣の窃盗で、大胆且つ悪質の犯行であり、なお魯鈍域の精神薄弱児であり、また実母は少年の幼少の頃父と事実上離別して少年と離別しており、実父も少年を放置して放浪生活をしており、少年は伯父である抗告申立人の許に保護されて、祖母と共に暮しているが、抗告申立人は精神薄弱であり祖母は高齢であつていずれも少年を指導監督する能力がないこと等を考慮すれば、少年を教護院に送致する旨を決定した原決定の処分はまことに相当であつて、その処分が著しく不当であるということもできないから、本件抗告は理由がないものというべきである。

(裁判長判事 加納駿平 判事 河本文夫 判事 清水春三)

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